個人的評価:(EA段階で)60点
Factorioのフォロワー作品として気になっていた『Dyson Sphere Program』(以下DSP)というゲームを購入。15時間くらい遊んだだけなのですが、モチベーションは一段落してきたので感想を書こうと思います。
DSPをプレイした感想としては、「面白くないわけじゃないけど、現状ではFactorioでいいかな…」という感じでした。ベースのコンセプトはまんまFactorioなので、ゲームとしては悪くありません。ただ、Factorioでは感じなかった細かなストレス要素が積もり積もって、あるところで面倒くさくなってしまいました。
これは個人的に面白い発見だったのですが、DSPをプレイしたことによって、Factorioがどれほど洗練されたゲームであるかを再認識しました。Factorioはゲームとして面白くない要素はバッサリ省き、面白い要素にのみフォーカスしたからこそ、あれほどの名作となりえたのだと思います。(Factorioの個人的なプレイ時間はレビュー投稿時でだいたい700時間ほど。これは自分の中ではかなり長い方)
どうしても両者を比較しないわけにもいかず、練度の違いに目がいった結果、そこまで高い評価は出来なかったという感じです。
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そういうわけで、本家であるFactorioとどう違うのか、どういったオリジナリティがあるのかに注目しながら思ったことを書いてゆきます。
Dyson Sphere Program 良かったところ
Factorioライクであること
やってみると分かるのですが、DSPでやっていることは根本的にはFactorioと一緒です。最初は一般的な鉱石の精錬から始めて、研究を進めて上位の素材を扱い、どんどん工場を大きくしていく。僕はこういうコンセプトのゲームが好きということもあり、その系譜にある作品とあれば、ある程度の面白さは保証されていると言っていいでしょう。
現状で実装されている技術ツリー。DSPではマトリックス(Factorioでいうところのサイエンスパック)を作って研究を進めていくのですが、やっていることはFactorioと全く一緒です。
技術ツリーとは別に、アップグレードのためのツリーも用意されており、要素数も多いです。Factorioにもプレイヤーボーナスを与える研究がありましたが、DSPでは純粋なテクノロジー研究とボーナスが分離されている感じ。
同系統で依存関係がある以外は、マトリックスがあればどれからでも研究ができます。なのでプレイヤーが優先したいボーナスから先に開放していくことが可能。施設の防衛を先に強化したいとか、プレイヤーの足を速くしたいとか。
こんな感じでベースはFactorioとまんま同じ感じなので、この手のゲームが好きならやってみて損はないかなとは思います。値段も僕が買ったときで2,000円であり、このクオリティのゲーム1本分と考えれば高くはありません。
縦方向への拡張
アップデートを解禁すると、研究所などの施設は同じものを縦に積んでいくことができます。このゲームは基本的には2Dの工場建設ですが、こういった試みによって、2Dの扱いやすさを保ったまま3次元的なゲーム要素を実現しています。それでいて3Dに付随するデメリットはありません(施設を積み上げると飛び越えられなくなるとか)。ここは上手く考えたなと思いました。
こういうふうに縦に積んでいくと、同じスペースで性能をスケールさせていくような拡張が可能です。この手のゲームでは同じものを増やしたいとき拡張先に困る状況がつきものです。既存の同じ施設を量産するだけでそこを上手く解消できるアプローチとして目新しさを感じます。
星をまたいだ拡張
DSPでは最初の星だけでなく、新たな資源を求めて他の惑星へと拡張していくことになります。ダイソンスフィアを作るというコンセプトもそうですが、ゲーム全体にスケールの大きさが感じられます。こういった別な惑星への拡張という試みは、FactorioのオーバーホールModや、待ちに待たれたDLC『Space Age』にも見られますね。SF的な好奇心をくすぐられるので個人的には好みです。
新たな惑星へと版図を広げていくのは一苦労ですが、最終的にそこはちゃんと自動化できます。「最初のセットアップは大変だけど、それを乗り越えればあとは楽」というのはFactorioの線路引きやコンピュータ・プログラミングと同じです。
液体・気体の扱いがラク
DSPでも液体や気体といった無形の物質(原油とか水素とか)が出てきますが、扱いがシンプルで楽です。これらは他のアイテムと同じくインベントリに入れることもできるし、床にばらまかれたりさえします。
Factorioの仕様では、液体や気体が入った施設・スタッシュを取り除くとその内容物は消えてなくなります(通常の資源量だと特に原油は無駄にできない)。なのでたくさん貯めた液体気体を移動させたい場合、ポンプで吸い上げるみたいな一手間が必要です。まあこれはこれで不満は全くないですが。DSPではこのあたりがいい意味でシンプルになっていて、これはこれで悪くないと思いました。
搬送ベルトの交差がラク
DSPの搬送ベルトは交差するように配置すると、自動で橋渡しされます(Factorioだと地下搬送ベルトがないとこれができない)。なのでFactorioだと許されないようなめちゃくちゃなラインでもどうにかなってしまうのがDSPの柔軟なところです。
Dyson Sphere Program 一長一短
マップが球形
Factorioのマップが完全な「盤の目」だったのに対し、DSPは正方形の小さなマスからなる「球形」のマップシステムを採用しています。これは本家とは大きく異なったオリジナルな点です。
新鮮なゲーム体験が得られるという意味では評価できますし、宇宙を舞台としている感覚になって悪くないと思いました。
ただこの仕様には、緯度が変わるとマス目が微妙にズレるという致命的な問題があります。
どういうことかというと、マップが球形なのでどこまでも正方形を並べるということはできません。そのため、緯度のある地点で帳尻合わせのためのズレがあります。すると、そのズレより高い緯度で成り立っていたラインが、それより低い緯度ではなぜか成り立たなくなるということがほぼ必ず起きます。
もう少し詳しく書くと、まっすぐに伸ばしているはずのベルトがぐにゃっと曲がったり、ソーター(Factorioでいうところのインサータ)がなぜか届かなくなったりします。これはバグではなく仕様です。気づいたときは唖然としました。
開発者もこれが不自然な挙動であることは十分承知と思いますが、Factorioに慣れた身としては違和感を禁じえません。この問題は球形マップという根本的なコンセプトに付随するものであるため、今後のアップデートで改善されるかは微妙。
惑星間の移動が面倒
ゲームがある程度進むと新しい資源を求めて別な惑星へと進出していくこととなります。これは長所の欄でも述べたように、ゲームが持つ大きなスケールを感じさせる点で評価できます。
ただ、DSPではその過程で惑星から惑星へ地道に移動するというフェースが発生します。これも一長一短ではあるものの、個人的にはデメリットの方が大きく感じました。端的に言うと、ただ移動するというのは面倒なだけです。上記の燃料の問題もついてきます。
(僕がゲームで景観を楽しむということをしないからこう感じるのかもしれない)
FactorioのオーバーホールModでも、新たな資源を求めて別な惑星へと拡張していくものがあります。ただ、(僕がやったものでは)それらのModではその移動にまつわる面倒な部分はゲームからバッサリ省かれています。これもゲームとして面白い部分だけ抽出した結果です。このあたりのセンスというか、優先事項がDSPでは僕と合わなかったのかなと。
もちろん、最終的には資源のやり取りを完全に自動化することができます。しかしそれが出来たときの快感とそれまでの面倒を天秤にかけたとき、僕は後者の方が大きく感じてしまいました。
Dyson Sphere Program 気になったところ
ロボットでしか建築できない
どんな施設やベルトを設置するのにも、ロボットがキャラクターから飛んでいって配置するという一手間が発生します。しかもそのロボットは最初は三体しかいない上にスピードも極めて遅い。なぜ「自分で直接配置できる」という当たり前の仕様にせず、ここまでストレスのたまる仕様にわざわざしたのか理解に苦しみます。
プレイヤーに燃料補給が必要
Factorioのキャラクターが不眠不休で働き続けられるのと違い、DSPのキャラクターはロボットなので燃料補給が必要な仕様となっています。個人的にはこういう仕様はプレイフィールを下げるだけで、ゲームとしての面白さに繋がらないと思いました。
キャラクターは走るだけでなくジャンプしたり飛行したりもできるので機動性はあるものの、そういった特殊なアクションにはその分多く燃料を消費します。上記のアップグレードで移動速度を速くすると、なぜか燃費が悪くなるというデバフもついてきます。
燃料については、最初は木材のようなエネルギーの少ないものを使いますが、研究を進めればそのうちもっと燃費の良いものが使えるようになります。なので研究でラクになっていく要素ではあります。ただ、やはりゲームとしては面白くはないのは変わりません。
この点もそうですが、本家Factorioの仕様は徹頭徹尾、「ゲームとして面白いかどうか」にフォーカスされ、そこに開発者のセンスが光っているように感じました。もしFactorioのキャラクターに「眠って休む」や「魚を食べて空腹を満たす」という、リアルな要素があったら?僕であれば、それはゲームとしては面白くない、ただ面倒な要素でしかなく、プレイフィールに悪影響を与えていただろうと思います。DSPの燃料はそんな感じです。
埋め立てのための謎のリソース
DSPでは水辺に施設を配置するには、まずそこを埋め立てる必要があります。そのためには埋め立て用のタイルアイテムだけでなく、「土壌」と呼ばれる、インベントリとは全く独立したリソースが必要です。これがどうにも手間ばかりかかる印象。
どうすればこの土壌が手に入るかというと、施設や上記タイルを盛り上がった地面に配置すると、その土壌の盛り上がりの分だけ手に入ります。つまり、水辺を埋め立てるためには、埋め立てタイルを量産する→どこかで土壌を確保する→水辺を埋める、という3ステップが必要になります。
Factorioだと「埋立地」というアイテムを量産するだけでそれが出来ましたし、そもそもほとんど陸地なので埋め立てる必要性がそれほどありません。一方で、DSPは水辺の割合がかなり多いため、埋め立ては必須に感じました。問題は手間と必要性のバランスにあると思います。
今後への期待など
冒頭にも書いたとおり、EA段階の個人的評価は60点くらい。面白くないわけじゃないけど、本家Factorioと比べると「ゲームとしては面白くない要素」が個人的には目立ちました。ゲームのベースの部分は悪くないため、だいぶもったいない印象です。
逆に言えば、Factorioをやっていなければそれと比較することもないわけですから、もっと新鮮で疑問に思うことも少なくプレイできたろうとも思います。なので「まだFactorioをやったことがないけど工場建設ゲームに興味がある」という方にであれば、値段が安いこともあっておすすめはできます。
一方で、Factorioをそれなりの時間プレイしてきて高く評価しているという方であれば、僕と同じようにその悪い意味での違いに戸惑う可能性が高いと思います。まあ個人の好みの問題でしかないのですが、個人的には「リアルではあるがゲームとしては面白くない、面倒の方が優る」と思うポイントが多かった印象です。
とはいえDSPは本レビュー投稿時でまだアーリーアクセスの段階です。開発リソースがどれだけあるか分かりませんが、これからアップデートを重ねてどんどん良ゲー化していく可能性は大いに感じました。DSPが持つオリジナリティの部分と、それにともなう面白さがより際立つような調整、仕様の変更がなされれば確実に今より面白くなりうると思います。