XCOM2大型DLC『War of the Chosen』レビュー【実質XCOM2.5】

ストラテジーゲームXCOM2のDLC『War of the Chosen』(以下、WotC)をクリアしたのでレビュー。

XCOM2についての総合的なレビューについては下記の記事に書きましたが、今回はWotCの要素にフォーカスして書こうと思います。

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XCOM2にはいくつかDLCがありますが、WotCは最も大型のDLCであり、ゲームの基盤から大改造する内容です。定価もおよそ4,500円でゲーム1本くらいの値段がします。

その内容の変わり具合からしてWotCは実質XCOM2.5といっていいのではないかと思います。無印をベースに様々な要素を追加しつつも、難易度のバランスはきちんと取れていると感じました。

無印にハマった方なら買って損はないと思います。

新しい3種類のクラス

無印のときからXCOM2の醍醐味の1つは、用意されたいくつかのクラスの使い分ける楽しさにありました。

無印では5種類だったクラスは、DLCを導入することで数が増えていきます。

  • 無印…5種類
  • DLC『Shen’s Last Gift』…1種類
  • DLC『War of the Chosen』…3種類

WotCでは新たにリーパー、スカーミッシャー、テンプラーという3つのクラスが利用可能になります。

これらのクラスは無印にはない特殊なアビリティを持っており、無印をクリアした後でもまた新鮮な気持ちでプレイが可能。

この「特殊なアビリティ」というのが重要で、XCOM2はいかに特殊なアクションを駆使して戦況に柔軟に対応していくかが重要に思います。実際、ゲームをクリアするためには遮蔽に隠れて射撃するだけではなく、最終的には超能力としかいいようがないスキルを多用することが求められます。

その点WotCの3つのクラスは最初から何かしら特殊なアクションが行えるため、使いこなすことさえできれば強力です。

リーパー

XCOM2 War of the Chosen リーパー

リーパーは「シャドー状態」という特殊な潜伏状態になることができるクラス。

無印時代からXCOM2においては斥候役に敵を見つけさせるのは戦略上重要で、それには遊撃兵を先行させる、スキャナーを使う、高所を取る…といった方法がメインでした。

シャドー状態のリーパーは基本的に敵から1マス離れれば見つからないため、簡単に斥候を務められます。これにより進軍という重要なプロセスがやりやすくなり、プレイが快適になりました。

火力が出ないのが欠点ですが、後半に覚えていくアビリティを使えば多少は補えるようになります。

シャドー状態が便利すぎるのでスタメン入り確定と言ってもいいクラスです。

スカーミッシャー

XCOM2 War of the Chosen スカーミッシャー

スカーミッシャーは標準でフックを使えるのが特徴のトリッキーなクラス。

9つあるクラスの中でも変則的な役割を果たすことが多く、他のユニットでカバーしきれない穴を埋めるのに役立ちます。

戦略上優位なマス(特に高所)を取ることが重要であるため、フックによる移動は非常に強力。これが標準でついているのはそれだけでかなり便利です。

移動しなければ2回連続で射撃ができるのも特徴で、意外と火力も期待できます。

テンプラー

XCOM2 War of the Chosen テンプラー

無印からいたサイキック兵を近接型にしたようなクラス。

レンドという近接攻撃で敵を倒すと「フォーカス」という力が溜まり、それによって技の威力が上がったり、フォーカスを消費して技が使えるようになったりします。

このフォーカスをいかに貯められれるかが鍵であり、フォーカスを貯めると強力なユニットと化します。一方で、フォーカスが溜まっていないうちはやれることが少ないという弱点もあります。

WotCのクラスの中では個人的に一番扱いが難しく感じました。

というのも、XCOM2の戦闘において近接攻撃を仕掛けることには、前に突っ込みすぎて新しい分隊と遭遇するリスクがあります。近接攻撃レンドを主体とするテンプラーは、その意味で危なっかしいクラスです。

ただド派手な戦闘をするという点でも随一。ロマンあふれるクラスだと思います。

選ばれしもの

WotCのもう一つの目玉は、DLCの名前『War of the Chosen』にもあるとおり、『選ばれし者』という3体の新しい敵です。

選ばれしものは普通の敵とは全く異なり、ミッションに乱入してきてはプレイ中何度も戦うことになります。強さもモブとは一線を画するため非常に厄介。

これまでになかった攻撃方法や状態異常を駆使してはくるものの、ゲームの難易度はきちんと取れているように思います。手強い敵ではあるものの、それぞれ何かしら攻略法があります。別のDLCで登場する支配種のように、ゲームシステム自体を無視するような理不尽な敵ではありません。

面白いなと思ったのが、出てくるたびに能力がちょっと変わるところです。例えば近接や監視射撃が無効になる、爆発に弱くなる、などの特徴がある程度ランダムでつきます。

倒すと強力な武器も手に入るので、攻略上の存在意義もあります。

疲労システム

システム面での大きな変化としては、兵士に「疲労度」というステータスが追加されました。

兵士はミッションに出るたび疲労度が増していき、疲労状態になるとペナルティを追うことになります。(パニックを起こしやすくなる、ネガティブ特性がつきやすくなるなど)

疲労度が特に高くなると「動揺」状態となり、ミッションに出撃させることすらできません。

このシステムによって、同じ兵士を連続で使い続けることができなくなりました。

疲労度のない無印では、ノーダメージでミッションをクリアすれば兵士は入院の必要がなく、連続で出撃させることが可能です。これにより、いかにダメージを抑えてスタメンを維持するかが重要な戦略になっていました。

WotCでは無傷でも同じ兵士を使い続けることができないため、必然的に10~15人はある程度育てていく必要があります。

疲労システムは一長一短ありますが、トータルで見ると各ミッションにメリハリが出来て悪くない変化だと思います。

毎回装備をリセットして割り当て直すのだけは面倒なので、クラスごとにプリセット機能などがほしいところです。
(例えば兵士に特定のカスタム武器、サブ武器、アイテム、アーマーなどをいっぺんに装備させられるような仕組み)

ロスト

WotCでは選ばれし者以外にも新たなモブが何体か追加されます。その中でも特殊なのがゾンビのような姿をした「ロスト」です。

ロストは特定のミッションにしか出て来ない代わりに、出てくるときはエイリアンとは比べものにならないくらい大量に出てきます。

ただしトドメを指すと追加のアクションポイントをもらえるため、リロードなどで行動値が切れない限り、連続して倒していくことが可能。ロストは遮蔽に隠れたりもせず、攻撃も近接だけなので戦い方はシンプルです。

爆発を起こすと数が増えるというシステムであるため、グレネードやロケランに頼った戦術が使いづらいなど、工夫の余地があります。

DLCの新しいコンテンツとして、ロストは新鮮なスパイスになっていると思います。エイリアンとは違った戦略になるため、戦闘のマンネリ防止にはちょうどいいです。

秘密工作

XCOM2 War of the Chosen 秘密工作

「秘密工作」に兵士を派遣すると様々なボーナスを得ることが出来るようになりました。

WotCでは選ばれし者の存在など敵の脅威が増す一方で、秘密工作を初めとしてプレイヤーに有利な要素も追加されています。トータルで見るとプレイヤーと敵の両方が強力になった結果、無印と比べて実は難易度は上がっていないように感じます。

秘密工作をこなした兵士には経験値が入ったり、ステータスが追加で上がったりもするので、育成の面から見ても有用。管理のわずらわしさは全くないため、ゲームを純粋に面白くする要素だと思います。

ただ派遣した兵士が襲撃を受けたときのミニゲーム的なミッションはちょっと面倒に思いました。

レジスタンス指令

XCOM2 War of the Chosen レジスタンス指令

「レジスタンス指令」は、リーパー・スカーミッシャー・テンプラーの各勢力への影響力を高めると使えるようになるボーナスシステム。

前述のロストが倒しやすくなる、研究が早く進むようになる、経験値が早く貯まるなど多種多様なボーナスがあります。

同じ開発元FIRAXISのCiv6の「政策」に非常に似たシステムで、限られたスロットに定期的にカードをはめていくスタイルです。ワイルドカードがあるのもそっくり。

指令の効果の中にはかなり強力なものもあり、これもまたプレイヤーに有利なバランス調整の一つだと思います。

面白いのは、使えるレジスタンス指令が毎回のプレイ(ニューゲーム)ごとに違うところです。

どの指令から解禁されていくかはほぼ運なので、新しくゲームを始める度に違った選択をする必要がります。XCOM2のウリの一つである高いリプレイ性はここでも強化されています。

獲得経験値アップや武器アップグレードの一段回強化などが特に強力な印象です。

【技術面】ロード時間短縮

XCOM2無印ではミッション前後のロード時間が長いのが技術的なデメリットでした。

SSDを使っていてもそれぞれ20~30秒ほど待ち時間が発生し、プレイのテンポを乱していました。

WotCを導入するとなぜかロード時間が劇的に改善され、だいたい5秒くらいになります。技術的なことは分かりませんが、内部の処理が最適化されたことで動作が軽くなったのかもしれません。

無印ももう一度やりたいなとは思うのですが、WotCのロード時間を一度経験してしまうともう戻れないのが悩みどころです。

おわりに

以上、WotCについて主に無印から変わった点について書いてみました。

総評としては、XCOM2は無印の時点でも名作でしたが、WotCでより一層面白くなったと思います。単なる拡張版などではなく、ゲーム全体を見直したXCOM2.5と言っていいでしょう。

新しいクラスや敵、その他のシステムを導入しつつも、全体としてのゲームバランスはしっかり取れています。また、ゲームが複雑化しつつもプレイのわずらわしさはそこまで増えていません。

WotCの定価は4,500円くらいですがSteamではしょっちゅうセールをやっているので、ウィッシュリストに入れてチェックしてみてください。