3DSリメイク版DQ7を遊んだ感想【ドラクエシリーズの異端児】

3DS版のドラゴンクエスト7(DQ7)を遊んだので感想レビューを書きます。

廉価版(アルティメットヒッツ版)を新品でも2,500円程度で購入しました。

10年前くらいにPS版をクリア済み。PS版の細かい仕様は忘れてしまっている部分もありますが、比較しつつ書いていこうと思います。

良くも悪くも個性的な『石版』システム

DQ7はドラクエシリーズの中でも特に個性的な作品と言えると思います。

その最大の理由が、ストーリーを進める上で欠かせない『石版』システムです。

DQ7のストーリーのほとんどは、石版を数枚集める→封印された土地にタイムスリップする→鍵となる魔物を倒して封印を解く、というサイクルの繰り返しです。

これがゲームの面白さに良くも悪くも多大な影響を与えています。

 

石版を集めてパズルのようにはめこんでいく作業は、これまでのDQにはない新しい面白みがあります。

普通に地続きの大陸で次の街を目指すのとは違ったワクワクを感じました。

しかしこのシステムには大きな弊害もあり、PS版では攻略サイトを見ずに石版を集めるのは非常に大変でした。実際、これが原因でゲームを投げ出したプレイヤーも少なからずいたはずです。

なぜ石版集めがそんなに大変かというと、下記のようなことが多々あるからです。

  • ダンジョンや街の何でもない普通の宝箱に入っている
  • 話しかけることにほぼ必然性のないNPCからもらえる
  • カメラを回転させないと見えないドアの向こうにある
  • ほぼ必然性のない逆戻りをして手に入る

システム上1つでも石版が足りないと、どこかの時点で石版が揃わなくなり先に進めなくなります。

そのためダンジョンや街をくまなく探す必要があり、それが正直なところ苦行でした。

PS版でも次に必要になる石版の場所を教えてくれる占い師がヒントとして役立つのですが、それでも大変なことにはあまり変わりありません。

 

3DSリメイク版はというと、この石版周りのシステムがガラッと変わり、かなり遊びやすくなりました

特に「石版レーダー」の存在が大きいです。これがあるおかげでダンジョンや街の中に取りこぼしの石版があるかないか一目瞭然で分かります。

原作では影も形もなかった「案内役の妖精」が3DS版では登場し、石版の移動先も分かりやすくなっています。

これだけ大きな変更を加えたということは、開発陣も「流石にあれはやりすぎた」と思ったのでしょう。

リバランスされた職業システム

職業システムもまたDQ7を特徴づける大きな要素の1つです。

基本職を極めてさらに強い上位職へと転職していく育成の楽しみは、DQ7の大きな醍醐味だと思います。

キャラクターごとに任意の職業に就かせることができるため、プレイに多様性が生まれるのが楽しいです。

DQ8のようにキャラクターごとに役割がある程度決まっているのも悪くありませんが、個人的にはDQ7くらい自由に選べるのもやりがいがあります。

とはいってもキャラクターごとに素のステータスに差があるため、主人公を物理攻撃役、基礎MPの高いマリベルを魔法サポート役にするみたいな必然性はなくはないのですが。

 

職業のランクを上げて覚えられる「とくぎ」ですが、PS版では明らかにバランスの壊れた特技が目立っていました。

ゲームバランスを破壊していたとくぎの代表格としては「どとうのひつじ」「つるぎのまい」などがあります。これらは「一度覚えたらあとは攻撃にはそれしか使わない」くらい強いので、プレイの自由度を妙な形で下げていました。

一方、3DS版ではとくぎの強さについても調整されており、PS版ほどの決め打ち感はなくなりました

上の例で言えば「どとうのひつじ」は大幅弱体化、「つるぎのまい」は習得が終盤になりました。

パラディンがランク2で覚える「しんくう波」(MP0で敵全体に100前後のダメージ)など、未だに強すぎるとくぎがないわけではありません。しかし、習得時期などを考慮すればまだマシなバランスにはなったと思います。

二重探索がだるい

既に書いたように、DQ7では石版を集めるためにダンジョンから街まで隅々を駆け回る必要があります。

これをさらに苦行たらしめているのが、「現在」と「過去」で2回探索が必要になる点です。以下、これを「二重探索」と呼ぶことにします。

まず、石版を集めてタイムスリップした過去の世界で、その地域にある街やダンジョンをくまなく歩き回ることになります。これが1回目。

さらに、その地域(石版)のボスを倒すと現代でその地域が復活するので、今度は現代の街とダンジョンを探索します。これが2回目。

一応現代では一部のダンジョンがなくなっていることもあるのですが、基本的には同じダンジョンや街を2周することになるわけです。

これがすさまじくだるい。

最初のうちは街もダンジョンの小さめだったり、ゲームそのものに新鮮味があるのでそこまで気になりません。

しかし中盤以降になると二重探索にも飽きてくるので、個人的にはかなり苦行になってきました。

仮に石版システムがなかったとしても、小さなメダル集めを頑張るのであれば二重探索のだるさは依然としてあったでしょう。

ちなみに、3DS版では石版レーダーによって「その街やダンジョンに回収していない石版があるかないか」が分かるようになっています。なので石版の回収だけを目的にするなら、そこまで綿密な探索は必要ありません。
(小さなメダルの取りこぼしには繋がりますが)

50時間以上のボリューム

クリアまでにかなりの時間がかかるのはDQ7のメリットでもあり、デメリットでもあります。

一般に、ゲームは長く遊べるに越したことはありません。同じ金額のゲームを遊ぶなら、なるべく長い時間楽しんでいられる、つまり製品寿命が長い方がいいのは確かです。

僕はCivilizationやGrimDawnといったPCゲームをそれぞれ1000時間以上プレイした経験があるのですが、どちらも非常に満足のいく作品でした。

DQ7はRTAでもしない限りクリアまでに50時間くらいはかかります。この手のRPGにしては相当長い方だと思います。

参考までに、DSリメイク版のDQ5は裏ボス撃破まで20時間くらいでした。

【参考】ドラゴンクエスト5 DSリメイク版を遊んだ感想

 

しかし、DQ7のクリアに”結果として時間がかかること”は必ずしもメリットとは言えない部分があります。

なぜかというと、そのプレイ時間において例の入念な二重探索が占める割合が大きいからです。

さらに、二重探索とは全く別に、ストーリーを進める上で同じダンジョンを何度も往復しなければならない部分が目立ちます。簡単に言うと「お使い」です。

コスタール北の大灯台(移動する床の待ち時間がだるい)、プロビナの洞窟を3~4回往復させられたときは気絶しそうになりました。

DQ7にはとにかく「お使いムーブ」が多く、プレイ時間が無駄に間延びしている印象です。

進行には本質的なボリューム以上の時間がかかるため、40時間にもなる頃には既に集中が切れてしまいました。

シリアスな小ストーリー群

DQ7をストーリーの面から見ると、八割くらいは石版からタイムスリップする各地域の小さなストーリーの集合であると言えます。

それぞれの地域のストーリーはほぼ独立していると考えてよく、これもまたDQ7の特徴の1つです。

さらに印象深いのは、出てくる小ストーリーのほとんどが陰鬱としており、絶望感で満たされているという点です。簡単に言うと鬱展開が多いです。

 

そもそも魔王に封印された土地を描いているので暗い雰囲気なのは当然なのですが、悲壮感がよく描かれていると思いました。音楽もそれを一層際立たせています。

個人的にはからくり兵の脅威に怯えるフォーリッシュとフォロッド城のストーリーは記憶に残っています。

ただこういった魔物による恐怖は序の口で、DQ7の小ストーリーにおいて本当に怖いのは人間の方です。

特に胸が締め付けられるストーリーの本質は人間の「業」に基づくものであり、ひょっとすると本当に恐ろしいのは魔王ではなく人間なのではないかとも思ってしまいます。

レブレサック地方の過去から現在にまたがる一件はその好例でしょう。DQ7をプレイした方なら誰しも脳裏に焼き付いているはずです。

 

こういうシリアス過ぎるストーリーが苦手という声は散見されるので、この点でもDQ7は人を選ぶかもしれません。

ですが個人的にはデメリットと呼ぶほど悪い印象は受けませんでした。

三次元グラフィックとシンボルエンカウント

PS版のDQ7はクラシックな二次元グラフィックのゲームでしたが、3DSリメイク版では三次元グラフィックになりました。これも大きな変化の一つです。

フィールドの移動と戦闘はDQ8に近いです。

このようにPS版と比べて視覚や操作面が変わったことで、ゲームの印象も柔らかい雰囲気になったと思います。

個人的には、やはりクラシックな画面の方が好みである、というのが正直なところです。

あれぞまさにドラクエ。DS版DQ5のようなスタイルだったらなお良しでした。

また、機能的な面から見るとカメラの位置が低すぎてシンプルに画面が見づらく感じました。

画面内に収まる領域が小さいため、キャラクターを移動させているとどうしても違和感があります。

ただ、ミニマップが下画面に表示されるようになっており、そのおかげで視野が狭い問題はいくらか緩和されています。

 

敵との遭遇もランダムエンカウントではなく、シンボルエンカウントに変わりました。

フィールドやダンジョンにモンスターのシンボルが移動していて、プレイヤーを見つけると追いかけてきます。プレイヤーと敵のシンボルがぶつかるとエンカウントするという仕組みです。

Steamの体験版しかやっていないですがDQ11Sと同じスタイルです。

シンボルエンカウントになったことで、敵との遭遇頻度をある程度コントロールできるようになりました。これはストレスを減らせるメリットだと思います。

広いフィールドだとシンボルを完全に避けられるのですが、ダンジョンだと通路が狭くてどうしてもエンカウントします。

最序盤の謎解きがなくなった

PS版DQ7は大ボリュームの謎解きからスタートするため、モンスター(スライム)と初めて戦うまでに1時間以上かかります。

古典的なRPGを期待したプレイヤーはまずこの展開に驚いたことでしょう。僕自身も初めてDQ7をプレイしたときはこの謎解きを終えるのに難儀しました。

これも流石に問題ありと思ったのか、3DS版では序盤の謎解きがバッサリと削除されています

全くないわけではないのですが、小学校低学年でも分かるような何の意味もないお使いに置き換わりました。

相変わらずあっちへ行ってこっちへ行ってというムーブが面倒ではありますが、初戦闘までの時間は大幅に短くなりました。

これは賛否両論あると思いますが、個人的には遊びやすさを重視したこの変更はよかったと思います。

まとめ

まとめになりますが、ドラクエシリーズの中でもDQ7は異端児と言っていい作品だと思います。

何よりも石版集めによるストーリー進行が特徴的です。これが作品への評価を良くも悪くも大きく左右するでしょう。

全体として面白いのは間違いないのですが、誰にでもおすすめできるかというと微妙。

石版集めのための二重探索や、結果としてクリアまでに50時間以上かかる点を考慮すると、少なくともドラクエデビューには向かないのではと思います。

一方、PS版と比べると3DS版は格段に遊びやすくなったのは事実です。

作品の本質的な特徴(二重探索や陰鬱なストーリー、ボリューム)は変わらないものの、石版レーダーや石版案内人の登場など機能面は大幅にてこ入れされています。

PS版と比べると遥かにストレスが少ないので、今からやりたい方はぜひチェックしてみてください。