【The Outer Worlds感想】Fallout風ADV要素強めの良作【70点】

個人的評価:70点 佳作

Steam版『The Outer Worlds』(以下TOW)をクリアしたので感想レビューを書きたいと思います。

プレイの楽しさを損なうようなネタバレなどは書きません。購入を検討している方に向けての参考となるような、個人の感想を述べたいと思います。

 

総評から書くと、

  • 全体として良くも悪くもシンプルなゲーム
  • システムはFallout、ボダラン、Mass Effect風だが会話重視
  • 他タイトルと執拗に比較さえしなければ十分良作ではある

という感想になりました。

このゲームはフルプライスでは7,480円ですが、僕はセール時に購入したため2,468円でした。「良作である」というのは割引されたセール時の購入価格も考慮した上での評価であり、正直なところ、もし定価で買っていたら評価は下がっていました。

本作は個人的に殿堂入りしている神ゲーの一つでもある『Fallout New Vegas』(以下FONV)と同じ会社が制作したものです。また、ゲームシステムもFalloutシリーズに近いものとなっており、どうしてもそれらと比較して考えずにはいられません。かなりハードルが上げられた作品だと思います。

Falloutシリーズは3、NV、4をそれぞれ5週はしており、どれも名作と言っていい作品です。

ぶっちゃけるとTOWはFalloutほどのめり込んだわけではありません。ただこれは比べる対象が飛び抜けた名作なだけであって、TOWは他の比較対象を全く考えずゲーム単体としてみれば、普通に楽しいゲームではあるという結論に至りました。

以下、個人的にTOWの良かったところと悪かったところを列挙していきたいと思います。

良かったところ

Fallout風のゲームシステム

TOWはざっくり言ってしまえばいわゆるFalloutみたいなゲームです。世界観や細かい仕様はもちろん違いますが、ベースとなるシステムやコンセプトは同じです。

世界観はボーダーランズに近いものがあります。会話の選択肢がストーリーに影響を与える点はMass Effectを彷彿とさせます。

フィールドを探索して、クエストを受けて、報酬を受け取る。細部にまで満足できるかはともかく、こういう内容のゲームが好きであればやってみる価値はあると思います。

本作はこの手のゲームに求められる諸要素をざっとかき集めたような印象がありました。それぞれやや薄味でシンプルな印象を受けるものの、このゲームの目指したものは多くの人に刺さると思います。

作風についてもう少し書くと、TOWはFalloutやボダランに比べると会話重視な印象を受けました。ゲーム内の諸要素がシンプルということもあり、必然的にNPCとの会話やその中での駆け引きを楽しむ側面が強いです。

もちろん紙芝居を眺める完全なADVとは別物ですが、これは本作の特徴の一つだと思います。

 

クエストのクリア方法としてほぼ常にいくつかの選択肢があるのも面白いです。これはFalloutと同様です。

例えば、ダンジョン内を進んでいく方法については

  • 敵を全員なぎ倒していく
  • 後述する変装で進む
  • 会話で説得して通してもらう
  • スニーキングやピッキングで見つからずに潜入する

といったように、それぞれ何かしらのスキルを生かした戦略が立てられます。

利害関係のある人物と対立した際にも、

  • 殺す
  • 説得する
  • 買収する

のように選択肢があり得ます。さらに説得の中にもいくつか種類があって、バリエーションに富んでいると感じました。

ボリュームは適正

ゲーム全体のボリュームは個人的にちょうどいいと思いました。

DLCなしで、仲間クエスト全部+発生したサブクエストの大部分を消化してメインクエストを終えた時点で、プレイ時間は19時間でした。

The Outer Worlds プレイ時間

全てのテキストを隅から隅まで読んだわけではなく、NPCとの会話の選択肢も全て消化したわけでもありません。マップもクエストに必要な場所に行っただけで、意識して探索はしませんでした。面倒くさそうなサブクエストでスルーしたものがいくつかあるのと、話しかけていないNPCもいるので発生していないクエストもあるはずです。

それでこのプレイ時間です。

ボリューム不足を指摘するレビューも散見されますが、クリア時間という点ではオフゲーなら普通かなと個人的には思います。ただメインクエストにはもっとボリュームがあってもよかったかもしれません。

急いでやればもっと早くクリア出来ますし、ゲームの世界をじっくり味わえば30時間を超えることも十分あると思います。

TTD

本作には時間の流れを一時的に遅くするTTD(タクティカル・タイム・ダイレーション)という戦闘システムがあります。TTDを使うとヘッドショットが狙いやすくなったり、敵のHPなどの情報を確認できたりします。

これはFalloutでいうVATSみたいなものであり、クールタイムがあるので頻繁には使えないものの、FPS要素を少しだけ簡単にするような役目を果たします。銃で撃つだけのシンプルなシューターとは違った戦闘の仕方ができるという点では、Falloutシリーズの長所を引き継いでいます。

潜入時の変装システム

変装は、立ち入り禁止エリアに潜入するためのギミックの一つ。いわばミニゲームのような要素で、ダンジョン攻略時にしばしば登場します。

エリアに対応するIDを手に入れた上で潜入エリアにはいると、ゲージが無くなるまで敵対せず堂々と歩き回れるようになります。ゲージが無くなっても話術が高ければ乗り切ることも可能。

なるべく戦わずにゲームを進めるプレイスタイルを貫く場合、この変装ギミックでダンジョンを進んでいくことになるわけです。

これは比較対象のゲームにはなかった新しい要素で、なおかつ話術スキルとの関係性もある面白いギミックだと思いました。

くすっと笑えるブラックジョーク多数

Falloutシリーズでも散見された要素であるブラックジョークは本作でも取り入れられており、文書やアイテム説明欄で見られます。

センスのある一文を見つけたときは思わずにやりとして、荒廃しつつある世界を舞台としたゲーム内の良いスパイスになっていると思います。人によっては食傷気味かもしれませんが、個人的には楽しめました。

テキストを見つけた際はざっと流し読みしてみて、面白そうだったらしっかり読んでみるといいと思います。

主人公のバックグラウンドが曖昧なところ

僕の理解した限りでは、主人公は「コールドスリープから目覚めさせられたよく分からない人物」です。

この些細な設定が個人的には重要に思います。というのも、明確なバックグラウンドが語られないがゆえに、プレイヤーが自由に想像をふくらませる余地が生まれるからです。複数の勢力と関わりを持ちながらストーリーラインを進めていく楽しさがあるゲームにおいて、こういった自由があることは評価ポイントでした。

FONVの主人公である運び屋も、具体的なことは大して語られない「よく分からない人物」であり、それがFONVを神ゲーたらしめていたと確信しています。何をしてもいい、どんな可能性もあり得る世界がそこには広がっていました。

FO4は名作でありながらも、誘拐された子供を探す既婚一般人というある程度具体的な肩書が、人物像について想像をふくらませる(自分で作り上げていく)上で一種の制約になっており、個人的にマイナスポイントでした。

その点、TOWの主人公は出自のよく分からない人物であったため、ストーリーの世界にすんなりと入っていくことが出来たように思います。人によってはどうでもいい些細な点かもしれませんが、選択を繰り返しながらロールプレイをするゲームを楽しむ上では個人的に重要なポイントです。

悪かったところ

全体的にシンプル・薄味である

このゲームをクリアしてみて思ったことは、良くも悪くも全体的にシンプルだということです。

Fallout、ボダラン、Mass Effectといったゲームによって確立された「ある程度の面白さが保証されたジャンル」を踏襲しているがゆえに、たしかに面白いのは間違いありません。

ただ、一通り用意された諸要素がどれも洗練されきっていない感が否めず、全体的にどこか物足りない、もう一声ほしいという印象を受けました。端的に言えば深みが足りません。

 

一例として、装備周りについて述べたいと思います。

本作には武器を改良・改造することで、威力を増加させたり、アタッチメントをつけて特殊効果を付与するといったカスタム要素があります。

同ジャンルのゲームにも見られるこういったシステムを踏襲しているのはいいのですが、どうにも浅いように思います。

FO4ではベースとなる武器・防具を手に入れて、自身のスキルに応じた様々なカスタムを施していくシステムがあり、あれは個人的に楽しい要素の一つでした。

TOWの装備周りのシステムは、シンプルゆえか大して工夫の余地もなく、そこまで面白みが感じることが出来ませんでした。

また、難易度がノーマルだったのもあるでしょうが、自分の伸ばしているスキルに合う種類の武器でレベルの高いものを適当に拾って、お金に余裕があればちょっと改良するくらいでクリアまでは行けます。

なんか惜しいというか、もう一声ほしい。なんならFONV並みにシンプルにしても良かったかもしれない。

 

本作が薄味だと感じた他の要因としては、本作にはグレネードや地雷などの補助的な武器がありません。よってそれに対応するスキルやビルド構成もありません。

もちろん制作陣もこういった全体的な薄味感について気づいているとは思います。ただおそらく予算や開発期間の都合上、どうしても諸要素の作り込みが出来なかったのではないかと想像しています。

土台や目指しているビジョンは悪くないので、次回作があるのであればこの薄味感が払拭されていることに期待します。

マップ構造とファストトラベルの手間

ざっくりいうと、TOWの世界は星ごとにエリアが分かれていて、そのエリアごとに街やダンジョンが散りばめられています。

FalloutのDLCがそうであったように、メインマップとは別の小さなマップがいくつもあると想像してください。

個人的に、この特徴には2つの弊害があると感じました。

 

1つ目は、オープンワールドとしてみたときにどこか狭苦しく感じてしまうという点。

前述の通り、TOWの世界は星(あるいは衛生)ごとにエリアが分かれています。本来宇宙という広大な世界が舞台ではあるものの、このシステムによってむしろ、広いフィールドを探索しているという感覚が失われてしまいました。

この根本的な理由としては、やはり一つ一つのエリアだけ見ればそこまで広くはないからです。

ロケーションの数を数えたわけではありませんが、クリア後に振り返ってみるとFallout(特にNVと4)に比べるとずいぶん小さな世界を歩き回っていたなという印象が残りました。

星々が舞台である以上しかたのないシステム・体験だったと思いますが、どうにももったいなく感じました。

 

2つ目の弊害は、ファストトラベルが少し面倒ということです。

Falloutは「単一の」広いマップからなり、ダンジョンや建物の外であればどこからでも任意のポイントに直接ファストトラベルできました。

一方TOWの場合、星をまたぐファストトラベルは出来ません。よって、違う星のトラベルポイントに移動したければ、

  1. 船にファストトラベルする
  2. 目的地の星を選んで船を移動させる
  3. 目的のポイントにファストトラベルする

という手間が発生します。

さらに、2つの星にまたがるクエストは珍しくありません。

これもまた舞台の性質上しかたのないことではあるとしても、終始面倒な印象を受けました。

まとめ

総評としては、全体的に薄味感が否めないものの良作ではあるというのがクリア後の感想です。

Steamのセールで2,468円で買えたので、まあ値段の分は遊べたかなと思います。ただDLCまで買ってやりたいとはクリア時点では考えていません。

マイナスポイントもいくつか指摘しましたが、TOWはFallout系のジャンルとして普通に楽しめたゲームでした。何周も遊んだり何百時間もやり込むものではないかもしれませんが、あまりハードルを上げずにサクッと遊びたいならおすすめできます。

この手のゲームが好きな僕から見ても定価だと割高な気がしてしまうので、気になる方はセール時を狙って購入を検討してみてはいかがでしょうか。