Meta Quest 3と3S 実機比較レビュー。3Sから3に買い替えた感想

VRゴーグル『Meta Quest 3』と『Meta Quest 3S』をどちらも購入し、実際に使った上での比較レビューです。

要点
・3Sに大きな不満はないが、3Sから3に買い替えた価値はあった
・3の方が、「覗き込んでいる感」が小さい(視野角が広い)
・レンズ越しにある画面自体は違いが分からない
・3の方が、ハードウェアの細かな仕様が便利
・3の512GBという容量は無駄にはならない

どちらも使った感想としては、議論するまでもないですが、3の方があらゆる点で優れていると判断しました。そのため、金額を気にしないなら3を買っておけば間違いないと思います。

一方で、VR体験によほどのこだわりを持たない限り3Sも十分実用的であるとも感じました。やれることは本質的に両者ともに変わらないため、あとは細部のVR体験にどれだけこだわるか、3を買う予算(8万円)を捻出できるかの問題になってくると思います。

僕は最初に3Sを購入し、その後3を買ったという順番だったのですが、値段を考えるとどちらも買って損はない製品だと思います。また、3Sを持っていてもなお、3は買う価値があるとも思いました。

見え方の違いについて

3と3Sを比較する上で最も大事なのは、「VRの見え方がどれだけ変わるのか?」という問題だと思います。ハードウェアとしてのスペックは仕様を確認すれば定量的に判断できますが、見え方という点については結局は主観的なところもあり、購入前にはハッキリとは分かりません。

冒頭にも書きましたが、3と3Sでは見え方はやはり違います。

ゴーグルを装着してまず何よりも初めに思ったのは、3の方が「覗き込んでいる感覚」が小さいということでした。そして、3と3Sを総合的に比較したときの一番の違いもまた、この点にあると言っていいと思います。

ざっくりいうと、3の方が3Sよりも視野角が広いと思います。これはそんなに微妙な感覚というわけでもなく、例えば家電量販店の体験コーナーで試着してみただけでもおそらくすぐに分かるはずです。3の方がより視野が広い→覗き込んでいる感覚が小さい→よりその場にいるかのような感覚を得られる、と感じました。

3の視野角を経験した後だと、3Sの視野角は一段階狭いように感じ、まるで万華鏡のような「筒」を通して何かを見ているような感覚が多少あります。しかしこれはあくまで「3と比べれば」という話であって、3Sの見え方もVRコンテンツを楽しむのに十分だとは思います。

一方で、レンズの向こうにある画面の綺麗さ(=細かさ)は、どちらも変わりがないように感じました。例えば8KのVR動画を視聴したとき、「描かれているもの」自体の違いは僕には分かりません。最終的に得られるVR体験は確かに別物なのですが、それはほとんど(あるいは100%)レンズによるものという印象です。

PCで例えるならば、3も3Sも目の前にあるディスプレイ自体は全く同じ。ただし、「かけている眼鏡」が違うため、最終的な見え方が違ってくるという感じです。

 

実機を見れば一目瞭然なのですが、両者では全く違うレンズが搭載されています。

まずこちらが3のレンズ。

 

そしてこちらが3Sのレンズ。3と違い、まるで指の指紋のような模様が入っており、普段メガネなどに使われるレンズとはかなり異なった印象を受けます。
(もちろんVRを視聴する際はこの模様は全く見えない)

レンズの細かい技術的仕様については僕は分かりませんが、一つハッキリと言えるのは、主に視野角の違いといった要因から、見え方はかなり変わるということです。

ハードウェアの細かな違いについて

3には、3Sと比べてハードウェアの仕様で細かい違いがあります。一つひとつは細かいことに思えても、実際に使ってみるとやっぱり便利だなと思いました。

もちろん各仕様面で3Sが劣るとはいっても、4万円という価格差があるので当然です。

イヤホンジャックの有無

個人的に一番便利だと思ったのは、3にはイヤホンジャックがあるということ。

3Sにはイヤホンジャックがないため、内臓のスピーカーではなくイヤホンで音を聞きたい場合はワイヤレスイヤホンを使う必要があります。僕はワイヤレスイヤホンを1つしか持っておらず、3Sを使うたびにいちいちペアリングし直すのが面倒でした(3S用にもう1つ買えば済む話ではあるのですが)。

有線イヤホンはワイヤレスに比べて原始的でこそあるものの、ペアリングなどといったソフト面での操作を一切せずにすぐ使えるのは明確な強みと言えます。実際、有線イヤホンですぐに音を取れる、というのはやはり便利だと感じました。

レンズと目の距離の調整

3も3Sも、レンズと目の距離を調整する機能がそれぞれ備わっていますが、仕様がだいぶ違います。

3の場合、上記の写真のように「4段階で調整する仕組み」が採用されています。細かく調整可能であることと、今どの段階にあるのかがマーカーで視認しやすいのが便利。

 

一方、3Sの場合はもっと簡素で、パッドとゴーグル本体にアタッチメントをつけるか、つけないか、の2段階しかありません。しかもこれはパーツのつけ外しが必要なので(何度もつけ外しするものではないとはいえ)3の仕様と比べて手間です。

ちなみにこれは本来眼鏡用アタッチメントという位置づけであり、ゴーグルと顔の間に眼鏡のためのスペースを確保するためのものです。眼鏡がレンズに当たると傷つくため、見え方関係なく使った方がいいと思います。

瞳孔間距離の調整

「瞳孔間距離」を調整する仕組みは両者ともにありますが、これの利便性もやっぱり違います。3はゴーグル底面のホイールを回すことで、58mm~70mmの範囲で1mm単位で調整可能。ホイールを回すと画面に距離が表示されます。

3Sの場合、レンズ自体を左右にカチカチ動かすことで58mm,63mm,68mmの3段階に調整できるのみ。調整するたびに画面に表示されるのは3と同じ。調整方法、範囲、最小単位どれをとっても3の方が優れています。

meta questをまだお持ちでない方がこれを聞くと、まるで「瞳孔間距離は眼鏡の度数と同じくらい重要なパラメータなのでは?」と思うかもしれません。僕も購入前はそう考えていました。しかし、個人的には瞳孔間距離はそんなにシビアに考えなくてもいいと思います。

というのも、実際使ってみると分かるのですが、よほど細かい文字を読むのでもない限り瞳孔間距離をどれに合わせてもVR体験に大きな変わりはありませんでした。よって、細かい文字を読むことを想定しないなら、3Sは瞳孔間距離の設定が少ないから絶対ダメ、と考えなくていいと思います。僕は主な用途が通常のVR動画の視聴であるためか、瞳孔間距離によって見え方はほとんど変わらないように思います。

余談になるのですが、VRの動画を見ている際「近い距離の物体がぼやけてよく見えない」という現象を度々経験してきました。当初これは瞳孔間距離の問題かと思ったのですが、現在の結論としては、これはほぼ動画作品の作り方(撮り方)それ自体の問題であると個人的に考えています。

僕は3と3Sの両方で色々な動画を実際に見てみたのですが、近い対象の見やすさはそもそも動画コンテンツ(作品)ごとに大きく違うように思います。つまり動画によっては近い対象が見やすいものもあれば、ぼやけまくって見えないものもある、ということです。確かに瞳孔間距離の影響も0ではないのかもしれませんが、少なくとも動画を楽しみたいだけなら瞳孔間距離うんたらかんたらはそんなに重要視しなくてもいいと思います。

ストレージ容量について

2025年10月現在、3のストレージ容量は512GB、3Sは128GBと256GBがあります。僕が持っている3Sは128GBの方。

両者ともに実際に使ってみた感想としては、(使い方にもよりますが)128GBは最低限という印象でした。8K VRをたくさんオフライン保存するなら128GBでは近いうちに物足りなくなります。

ストレージ容量がこれだけあるといっても、まず本体のシステム自体にある程度の容量が割り当てられています。これはスマホやPCなどと同様。よって、ユーザーが実際に使えるのは上記の数字以下ということになります。

個人的にはオフラインに保存できるものはなるべく保存する使い方をしているため、512GBあっても無駄ということには絶対になりません。この点だけを見ても、やっぱり3にした甲斐があったと思います。

3Sにも256GBという選択肢がありますが、わざわざその128GBとの差額を払うくらいなら、もう少し予算を工面して3まで手を伸ばした方が合理的だと思います。

ストラップは3も3Sも同じ

ゴーグルを頭部に固定するストラップは3も3Sも同じです。ネット上のレビューを見ても散見されるように、つけ心地は正直よくないと思います。

 

僕はサードパーティ製のストラップに交換しているのですが、装着感は雲泥の差と言えるほど変わりました。別に本体と一緒に急いで買う必要もありませんが、ストラップ交換はmeta quest3/3Sユーザー全員におすすめしたいです。

【関連】Meta Quest 3/3S用のストラップ『KIWI design K4』レビュー

3Sから3に買い替える価値はあった(個人の感想)

ここからは、僕が3Sを持っている状態でさらに3を購入した感想となります。

僕は当初、初めてのVRデバイスとしてMeta Quest 3Sを購入しました。そしてそのおよそ2ヶ月後、さらなる高みを目指して3を買ったという経緯があります。

3Sを持っていながら3を買うか迷っていた段階で最も知りたかったのは他でもなく、「3を買ったとして、その値段なりの価値が感じられるのか?」ということでした。これを未来の自分に聞きたかった。Meta Quest 3が大体8万円、3Sが44,000円とするなら、およそ2倍弱の価格差があります。果たしてその価値はあるのか?

結論としては、3と3Sを両方使った今、3を買う価値は十分にあったと言えます。後悔は全くありません。

誤解のないように書くと、3へのアップグレードを考えていたとはいっても、別に3Sの性能に不満があったわけでは全くありません。むしろ、初めてのVRデバイスとして3Sを手に取り、「VRの技術はここまで来ていたのか」と感動しました。近年の円安などを考慮すれば、これが4万円台で買えるというのは安いとさえ思ったほどです。

3Sを買った当時、そもそも僕はVRという技術自体にそこまで情熱があったわけではなく、「面白そうだから手を出してみるか」くらいの感覚でした。しかし期待は良い意味で裏切られ、直前に書いたようにVRの素晴らしさに気づき、その結果として3ではどんなVR体験が得られるのか気になって仕方なくなった次第です。

3と3Sの両方を使い比べてみて感じたことは、既に書いたとおりです。やはり3の方が一段階視野角が広いため、その分だけ「澄んだ」VR体験が得られます。これはハッキリと感じます。レンズ自体が別物であるため、その違いが、見え方に大きく影響しているように思います。さらに、上に列挙したようなハード面の細かな仕様の違いによって、普段使いする上での利便性も3の方が格段に上です。

そのため、3を購入した今となっては3Sを使う理由はなく、近々フリマで手放すことを考えています。

 

いくぶん抽象的な話になるのですが、3ではなく3Sを選んだ場合、「3の方がVRがもっと綺麗に見えるのでは」という疑問が常に付きまとうのはデメリットだと後から気づきました。別に3Sに不満はないとしても、ネット上のレビューを見てもやはり3の方が綺麗に見えるよとみんな言うわけですから、僕の場合一度気になりだしたら頭から離れませんでした。この問題は、予算などを理由にきっぱり諦めるか、3を買うかしないと解決しません。

 

これらを総合すると、結果論になるとはいえ、個人的には「最初から3を買っておけばよかった」となります。

誤解のないように再度繰り返すと、僕は3を持っている今でさえ、3Sの性能に不満があるわけではありません。3に比べれば劣るというだけの話であって、4万円台という価格を考えればあまりにもコストパフォーマンスに優れた実用性を持つVR入門機だと確信しています。しかしながら最初から3を買っていれば、(フリマである程度回収できるとはいえ)3Sの価格分を節約できたのもまた動かぬ事実です。

よって、過去の自分にメッセージを伝えるなら最初から3の方にしておけ…ということになりますし、もし3も十分予算の範囲内で3と3Sで迷っている人がいるなら、3の方をおすすめしたいと思います。metaの製品の中では今のところ3が最上位機種なのですから、これを買っておけば少なくとも新型が出るまでは何も考えなくてもいいわけです。

以上が3と3Sの両方を実際に購入し、使い比べてみた上でのレビューとなります。過去の自分と同じような状況で悩んでいる方の一助になれば幸いです。