2023年11月時点のアーリーアクセス段階の評価です。まだ完成形ではないという前提のもとでレビューします。
累計30時間ほどプレイした感想としては、非常に大きな長所と短所が混在していてなかなか評価が難しいと思いました。
良い面に目を向ければ今後の発展も含めて神ゲーと呼んでもいいと思いますが、一方で欠点と思える面も大きく、全体としてはかなりもったいない印象を受けます。
Steamでかなり好評だったこととレビュワーのプレイ時間も長いものが多かったことから期待していたのですが、僕は第3面をちょっとやった段階で「これはもう無理だ」となりプレイを断念。EAが終わって完成版になったらまたやるかどうかという感じです。
Valheim 良かったところ
建築の自由度とグラフィックス
まず何より良いなと思ったのが、建築の自由度とグラフィックスのバランスです。
自分はこれまで建築系のゲームはあまりやったことはなく、7DTDをちょっとやって飽きたのと、Fallout4の簡素な建築要素を触ったくらいです。そんなに建築が好きという方でもないと思いますが、Valheimで地面をならしたり家を作ったりする作業はかなり楽しめました。最初はただの森や荒野だったりした場所に立派な建築物が出来上がると思わず見惚れてしまいました。特に整地の自由度が高いのが評価ポイントで、「ここまで出来るのか」と驚きでした。本作は色々な要素を持つゲームですが、建築をメインに楽しんでもいいくらいだと思います。
これに関連して重要なのがグラフィックスです。
というのも、グラフィックスが簡素になるほど建築の自由度が上がる一方でリアル感が犠牲になってしまいます(マイクラみたいになる)。逆にリアルを追求しすぎるとPCの負荷が高くなって現実に遊びづらくなります。その点、Valheimは建築の自由度とグラフィックスのバランスをちょうど良いところに落とし込んでいるように思います。
その結果として、ある程度複雑で柔軟性のある建築要素を、現実的なPCの負荷で遊ぶことができるというわけです。僕が使っているPCは現在i7-4770 RX6600XTという構成なのですが、画質を特別下げなくても支障なくプレイできました。
戦闘メカニクスは良好
キャラクターの操作性や戦闘アクションのメカニクスはよく作られていると思います。ふだんアクションゲームをあまりやらず得意でもない自分から見ても、十分快適と言っていいプレイフィールでした。
もしかすると最新のアクションゲームには劣るのかもしれませんが、僕がこの手のゲームに求めている操作感は得られています。
個人的に気に入ったのは、パリィが簡単に出来ることです。これは他のゲームにもよくあるやつで、敵の攻撃に対してジャストタイミングでブロックすると弾き返してカウンターできるというものです。こういうのってけっこうタイミングがシビアで自分は苦手なのですが、Valheimなら割と簡単です。しかもこのゲームではパリィがものすごく重要です。そういうわけで本作はアクションが苦手は人でも遊びやすく作ってあるとも思いました。
近接戦闘だけでなく、弓矢を使ったシューティングアクション(TPS)も違和感なく出来ます。
たった1.37GBのゲームデータ容量!
インストールして驚いたのですが、なんとこのValheimというゲーム、データ容量がたった1.37GBしかありません。DLの手間がほとんどかからなかったのはささやかながら好印象でした。
本作はオープンワールドのゲームであり、広大なフィールドと大量のオブジェクトからなる世界が舞台となります。ただ、本作はシード値からワールドが生成される仕組みを取っているため、ここまでデータを削減できたのだと思います。それでいてちゃんと遊べるワールドが生成されるというのはよく作られていると思いましたね。
また、シードから生成する仕組みによって、シードが変われば違う世界(地形、異なるバイオーム分布)で遊べるというのがなかなか画期的だと思いました。他にこんなゲームあったかな。
Valheim 悪かったところ
ここからは逆に気に入らなかったところを具体的に書いていくのですが、先に書くとそれらのいくつかは実はゲーム内の設定で緩和することができます。
では何がダメなのかというと、そういう「明らかな難易度下げ・制限解除の必要性」を感じた時点で冷めちゃったというのが問題です。理屈抜きの感情で「もうダメだ」と思っちゃいました。
以下、その不便な点について。
鉱石のテレポート制限
Valheimをやった人が一番面倒に思うのは「鉱石とインゴットがテレポート出来ない仕様」ではないかと思います。
本作の世界はとても広いですが、ポータルという建築物をペアで作ることでどんな距離でもすぐに移動できるようになります。これはこのゲームを支える根幹の要素の一つと言っても過言ではありません。
それと同じくらいこのゲームの基礎をなすルールが、鉱石とそれを加工したインゴットだけはポータルで運べないという仕様です。これらのアイテムはゲーム内で重要な別なアイテムを作るのに必要な素材であり需要も大きく、なおかつ重いので重量制限を圧迫し運搬がただでさえ困難です。それがポータルで運べないのは本当に不便です。
確かに、わざわざそういう仕様にした意図はよく分かります。どんなアイテムでもあちこちに簡単に運べてしまうと、開発者が想定するゲームのペースよりも早く作業が進んでしまったり、世界に対して目を向ける機会が失われてしまうからでしょう。たぶん開発者は、広大な世界の中でアイテムを泥臭く地道に運んでほしいんだと思います。
ただ個人的には、テレポート制限は単にプレイ時間を無意味に水増しする要素でしかないと思いました。テレポートを制限するというのは、かかる時間をただ増やしているだけであり、ゲームを難しくしたり、プレイヤーに工夫を要求しているわけでもありません。
僕はゲームは長くプレイできてなんぼだと思ってはいるものの、それはあくまでプレイの密度を維持しての話です。全力で頭を回転させたり爽快感を得ながらプレイした10時間と、アイテムをただ運ぶことだけに費やした10時間とでは価値が違います。
じゃあワールド補正からテレポート制限を解除して遊べばいいじゃんとなるのですが、なんかそうやって開発者の意図しない方法を模索し始めた時点で萎えちゃったんですよね。そうやって装備や建物を作って何になるのって思っちゃいました。これはあくまで個人的な価値観ですが。
(しかしながら、ゲーム内設定で解除出来る要素についてこれだけぐだぐだ言うのも野暮かもしれませんね)
死亡時の全ロス
死亡したときに装備品も含めてすべてのアイテムをその場にロストするというのは、流石にやりすぎかなあと思いました。その仕様で得られるスリルと楽しさよりもストレスの方が上回ります。
簡単にリカバリーできる最序盤ならまだしも、ボス戦や攻略中バイオームのダンジョンの奥深く(しかも自分が死んだということは敵がまだいる)でロストすると回収が苦行でしかありません。
ちなみにこのロストについてもワールド補正から設定を変えることが出来て、いちばん簡単にすれば全くロストしないようにも出来ます。ただこれも鉱石の件と同じで、そうする必要性を感じた時点でゲームへの没入感が一気に雲散霧消して萎えちゃったわけです。
ちなみに僕は死亡時のロスト自体には反対ではなくて、デモンズソウルくらいのロスト仕様なら程よいスリルを生むことが出来、ちょうどいいバランスだったと思います。
バフ準備が面倒くさい
休憩や食料でバフをかけないとまともにプレイ出来ないバランスも面倒が勝るなと思いました。
このゲームでは素の状態ではHPやスタミナの上限が低すぎてお話になりません。HPが低いとワンパンされ、スタミナが無いと何のアクションも出来なくなります。なのでそれらの上限を増やすバフは必須。
なのですが、そのために毎度毎度食料を用意したり、絶えず休憩を取らなきゃいけないのが面倒でした。しかも死んだらバフは全部剥がれます。
ただ、これもまた開発者の意図とプレイヤーが求めるプレイフィールのミスマッチなのだと思います。開発者はサバイバル感を体験してもらうためにベッドで休んでほしいし、食料も調達・調理して定期的に摂ってほしい。そうした上でゲームを攻略してほしい。
一方プレイヤーである僕はゲームの面白い側面だけを貪欲に楽しみたいので、そのサバイバル感が時として足かせとなってしまいます。
Valheimは神ゲーになり得る
最後にまとめると、Valheimには上記のように強烈な長所と短所がどちらもあるように思いました。
核となるゲームデザインは素晴らしく、建築要素はそれ単独でゲーム一本分の魅力があり、アクション面の操作性についても十分遊べるレベルで実装されています。実際、第2面まで進めた段階では「これは神ゲーだ!」と確かに思いました。
ただそれ以降は難易度の上昇も相まってゲームの不便な側面が浮き彫りになり、しだいに長所をかき消すほどにまで増幅していきました。開発者自身もそれらの不便性については既に認識していて、制限緩和・解除の仕組みをちゃんと実装してくれています。
ただ個人的な感情として、わざわざそういったチートまがいの大幅な設定変更を余儀なくされる時点でゲームへの熱が冷めてしまいました。その先で装備を作ったり家を建てたりして何になるのかと。これは本当に個人の価値観なので、人によってはそう感じないことも大いにあるとは認めます。
僕はゲームはなるべく開発者の意図したとおりに遊びたいと常々考えています。どうしても許容できない場合のみMODなどを使って小骨のような不便な要素をなくしたりはします。なのですが、本作においてはゲームの根幹部分から「これは変だ」と思ってしまったこともあり、プレイを断念した次第です。
そういうわけでけっこう厳しいことを書きはしたのですが、他人におすすめするかというと割とおすすめではあります。
その理由としては、まず第一に本作はまだEAの段階にあり、今後のアップデートを経てもっと面白くなる可能性があるからです。僕自身もこのゲームのことは基本的には好きなので、そうなることを願っていますし、神ゲーになる余地は大いにあるとも思っています。
また、このゲームは刺さる人にはとことん刺さるタイプのゲームだと思っていて、人によっては一旦ハマれば何百時間もやれるシロモノにもなり得ます。
セールで1,200円くらいになるので、ちょっとでも気になったら今のEA段階でも買ってみて損はないんじゃないかなと思います。僕自身も途中でプレイを断念した身とはいえ、買って後悔は全くしていません。