個人的評価:75+α(伸びしろあり)
ハクスラARPG『Last Epoch』をプレイした感想レビューです。
当記事を書いている2023年12月現在、本作はアーリーアクセス(EA)段階にあり、翌24年2月に正式リリース(1.0)が予定されています。そのため、この記事はあくまでEA段階でのインプレッションを述べたものになります。
本作がPath of ExileやGrim Dawnといった著名なハクスラタイトルの影響を色濃く受けているのは、もう誰が見ても明らかだと思います。「面白いハクスラを作ろう!」という意気込みがゲーム全体から滲み出ている意欲作でした。
個人的にPoEもグリドンも大好きで、その直系のフォロワー作品ともなるとどうしても大きな期待をせずにいられません。比べられる作品が作品だけに、評価のハードルは上がってしまいます。(ちなみにDiabloはあまりハマらなかったのでよく知りません)
当然、リリースからアップデートを繰り返しているPoE・グリドンと比べると、現状のLast Epochの練度はまだその2つと比肩するほどではないと思いました。ただ、今後の追加コンテンツやゲームシステム拡充の可能性を考慮すれば、まだまだ伸びしろがあります。
【外部リンク】Last Epoch | Steam
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Last Epoch 良かったところ
既存のハクスラのいいとこ取り
「ハクスラの面白いところはこういうところである」という、コミュニティの総意みたいなものを汲み取り、それを本作でも実現しようとしている意図がゲーム全体からよく伝わってきました。開発者たちはハクスラがすごく好きなんだろうなあと思います。これがLast Epochに対する一番大きな印象です。
ゲームのいたる所で、既存のタイトルでプレイヤーから評価されてきた長所を継承しているのが見て取れます。それだけでなく、「他の作品ではここはストレスだったよね」というポイントについてはバッサリ切り捨てたり利便性を高めることで、ゲーム全体がブラッシュアップされていると感じました。言うなれば、とてもお行儀の良い作品です。
そういうわけで、ジャンルやベースとなるゲームシステムについては個人的にもちろん好みの内容でした。
ビルド構築のオリジナリティ
Last Epochは既存の作品を参考にするだけでなく、オリジナリティのあるシステムを追求しているようにも見受けられました。ハクスラARPGの真髄といえばやはりビルド構築の面白さだと僕は思うのですが、その点でも工夫が見られます。
クラス選択やスキルポイントの分配のような基本的な部分はグリドンとよく似ています。一方、選択したスキルを「Specialize」することでさらに強化していくのは本作のユニークな点です。「専門化」や「特化」とでも訳すべきでしょうか。Specializeによる強化の仕方にも色々な方向性があって、それゆえシナジーの生み出し方、つまりビルドの幅が生まれます。
他作品でも見られる属性変換という要素をSpecializeと絡めていくのはなるほど面白いと思いました。ペットスキルをSpecializeしたときの変わりようも独特です。
これからアップデートでどんな変更があるにせよ、おそらくここが本作のビルド構築の大きな柱になってくるんじゃないかなと思います。
操作・アクションが複雑すぎない
左手が忙しすぎないのは個人的に評価ポイントでした。アサインできるスキルの数はそもそも5個しかなく、実際に使うスキルはさらに少なくてもどうにかなる印象です。
グリドンの場合、ビルドによってはまるでピアノ演奏のような操作が必要なことがありました。1~9までアサインしたスキルを適宜使わないとビルドの真価が発揮できないみたいな(それでも足りないこともある)。ここまで操作が忙しいとプレイフィールが悪くなりますし、理論値を出すことを諦めてもいい気持ちはしません。
また、キャラクターの移動面のアクションが難しくないのもGOOD。敵の強烈な一打はモーションやエフェクトで分かりやすく設計されており、それを把握さえすれば特別なプレイヤースキルは求められていないように思います。
PoEの感想記事にも散々書いたとおり、個人的にはハクスラARPGで過度なプレイヤースキルが求められるのは好みではありません。開発者がこのあたりをどれほど意識したかは分かりませんが、結果として僕が求めるゲームバランスになっていました。
利便性への配慮が盛りだくさん
このゲームはとにかくストレスフリーを目指しているんだなと、あちこちの仕様から伝わってきました。「既存のタイトルはこういうところが面倒だったよね、だからLast Epochではこうするよ」みたいな。
EA段階でもゲーム内のアイテムフィルターが既に実装されていて、なおかつその柔軟性がとても高いのは驚きでした。Show・Hideの詳細な絞り込みだけでなく、カラー変更のようなカスタム要素まであります。アイテムの種類やAffix、レア度などについて複数の条件を組み合わせて表示・非表示できます。フィルターの作り方も直感的です。
もちろんPoEほどフィルターのカスタマイズ性は高くありません。PoEの場合はフィルター編集の一部の機能をサードパーティー化しているので、それとゲーム内フィルターを比較するのは流石に酷というものです。それにLast Epochはまだそこまでゲーム要素が複雑ではないことから、現状のゲーム内フィルターでも十分すぎる機能を持っていると思いました。これで不便を感じるシチュエーションが果たしてあるのか、というレベルです。
ゲーム内スタッシュも拡張性に富んでいて使い勝手が良いです。ゲーム内通貨を使うことでスタッシュをタブ単位で拡張していくことができ、名前変更や色分けが可能。グリドンの外部ツール「GDIA」とはもちろん別物ですが、現状ではこれくらいのスタッシュ容量と管理システムがあれば十分かなと。
クエストマーカーも非常に親切です。クエストで行くべき方向・場所がエリアマップ上で常に表示されているので、とりあえずマーカーの場所に行けば迷うことは絶対にありません。(クエストの内容が分からなくても脳死でやれてしまうとも言えますが)
今でこそGrim Dawnのクエストはどこに行けばいいかほぼ全部覚えていますが、最初は調べないと分からないくらい迷いました。倒すべき敵のスポーン位置がランダムだったり、不親切といえば不親切かも。おそらくLast Epochではこういう引っ掛かりをなくそうとしているのだと思います。
最後に、なんとこのゲーム、敵に倒されたとき「どの敵の何属性の攻撃で死んだか」が表示されます。PoEではそもそも何を食らったのか分からず死ぬみたいなことが多かったので、この仕様はまさにそういったストレスへのケアと言えるでしょう。本当に配慮が行き届いていると感嘆の念を禁じえません。
Last Epoch 気になったところ
必ずしも悪いところではないですが、気になった点をいくつか。EAなので魚の小骨のようないくつかの不満点については割愛。
敵へのヒットや倒す感覚がなぜか薄い
このゲームをやっていると、なぜか他の作品に比べて、敵を攻撃したり倒しているという感覚が薄く感じます。ここがどうにも違和感でした。Steamのレビューでも同じ意見を目にしたので、こう思っている人は一定数いるんじゃないかなと思います。
原因を考えてみた結果、デフォルトでは「エフェクト音」のボリュームが小さいことに気づきました。このエフェクト音というのは、スキル発動時の音や、敵に攻撃が当たったときのヒット音などを含む、効果音全般のことです。なのでこのエフェクト音を相対的に大きくすることで、最初の状態よりはかなり違和感が少なくなりました。
しかし、それでもやっぱり何か物足りない。なんかスカスカしているように感じる。敵と戦ったり倒している感覚が薄いので、どうにも爽快感に欠ける印象が未だに拭えません。その原因がまだサウンド面にあるのか、それともヴィジュアルの問題なのか。感覚的な問題ということもあり、よく分かりません。
ちなみにグリドンでは最初のゾンビを棍棒でポコポコ殴る段階から、しっかりと戦っている手応えが得られています。
この点を今後のアップデートで改善するのは難しいだろうと見ています。この問題の原因はゲームの根本的なところにあるように思えて、それを修正するのは難しそうです。スキル全般の効果音をイチから作り直すのも現実的ではありません。自分でも上手く説明できないことについて不満を漏らすのも野暮かもしれませんが、どうにかこの辺のプレイフィールが今後マシになればと思います。
装備品のシステムは現状あっさり
装備品まわりのシステムについては、パッと見ではPoEとものすごく似ている割にあっさりしていて、ちょっと物足りないかなと思いました。
武器防具にはベースアイテムに対してレア度があって、そこにAffixが付くというよくあるシステム。ビルドに合うAffixが揃って、なおかつそれぞれの値が高ければなおよし、というのも同じです。
システムを完全に理解したわけではないですが、クラフトも含めてそこまで奥深さはないかなと。なぜこう思ってしまうかというと、それはとりもなおさずPoEと似ているからです。あの複雑怪奇なシステムを一度経験したあとで、同じようなインターフェースを目の当たりにすると、どうしても比べてしまいますし、同等の練度を心のどこかで求めてしまいます。
グリドンはPoEほど複雑ではないとはいえ、コンポーネントや増強剤の選択に絶対的な正解はなく、他要素とのバランスを考える必要もあり工夫のしがいがありました。MIやダブルレアといった要素も深みを与えています。
現状Last Epochのクラス、スキルまわりについてはSpecializeシステムの存在も相まって、上手く仕上がりつつあるように思いました。なので、あとは装備品・クラフト周りがもう数段階奥深くてやりがいのあるものになれば、ゲームとしてぐっと面白くなるのではと期待しています。ゲームを複雑化するほど遊ぶハードルが高まる傾向にあるとしても、この手のジャンルでは多少難しすぎる方が結局は評価されうると思います。
日本語非対応
日本人プレイヤーが遊ぶにあたって、日本語化できないのは大きなハードルだと思いました。
ゲームシステムはそれほど複雑でなく、他作品の考え方を流用できるとはいえ、未知のものを英語で理解するのはなかなか疲れます。特にしんどいと思ったのはキャラクターどうしの会話です。大学受験では目にする機会がなく、ネイティブの実生活でもほぼ使われないであろうファンタジー系の単語が当然ながらけっこう出てきます。いちいち調べるのも手間なので、なんとなくで読み流すことが多かったです。もっと英語力があれば…。
ただ、クエスト画面に書かれている要約はだいぶ読みやすいと思いました。もちろんボキャブラリーについての問題は依然として多少あるものの、あくまで説明文なのでまだマシに思いました。どこで何のために何をするのかは大体分かります。
なので会話はちんぷんかんぷんでも、クエストの説明文さえざっくりと読めれば、ストーリーに置いてけぼりになることは避けられると思います。
グリドンも公式では日本語非対応ですが、有志の方が作った日本語化ファイルを使えば日本語で遊べます。Last Epochは基本サーバーに接続される仕様のためか、そういったファイル改変はできないのでしょうか。
Last Epoch 感想まとめ
Last Epochはハクスラへの愛が肉汁のように溢れ出る意欲作であると感じました。
PoEやグリドンを好んでやってきた身としては、まさに「こういうのがやりたかった!」というジャンル・ゲーム内容です。
開発者のプレイフィールへの感度がとても高いのが好印象でした。プレイヤーがどういう要素にストレスを感じるかをしっかり把握していて、そういった負の要因を取り除こうとしている姿勢が強く伺えます。不快な要素を我慢することなくゲームの面白いところに集中できるのは大きな長所だと思います。
一方で、誤解を恐れず言えば、現状(正式リリース直前のEA段階)では、やはり今のPoEやグリドンに比べると色々と物足りないのが正直なところではありました。ただEAのゲームと何度もアプデを重ねてきたDLC込みのゲームを直接比較するのはナンセンス。投入された開発リソースが違いすぎます。
ストレスフリーという点については既に高いレベルで実現できているように思います。なのであとはゲームシステムの拡充や、良い意味での複雑化といった部分に期待したいと思います。個人的に好きなジャンルなので、正式リリースだけでなく、その後のDLCのようなコンテンツも楽しみです。
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