今回は僕がこれまで読んできた海外SF小説の中から、特に面白いと思った作品を5つご紹介します。
「SF小説をまだ読んだことがないけどおすすめがあれば読んでみたい」
という方を想定して書きました。
5つに厳選しておすすめするので、気になったものがあれば読んでみてください。
ジョージ・オーウェル 「1984」
僕の一番のおすすめはジョージ・オーウェルの「1984」です。
オールジャンルで小説を一冊紹介するとしても、僕は1984を選ぶほど好きな小説です。
ディストピア小説
1984は典型的なディストピア小説であるといえます。
「ディストピア」は理想郷を意味するユートピアと反対の言葉です。
1984の物語は、徹底した管理社会を舞台としています。
人々の行動や音声はテレスクリーンという装置で監視され、言論や思想は完璧に統制されています。
歴史は都合のいいように書き換えられ、時には人が存在した事実さえも抹消されるという恐ろしい社会。
小説の中では、このような設定がたくさん登場し、独特の世界観を感じさせます。
社会を支配するのは「ビッグ・ブラザー」が率いる党。
街のいたるところに、彼の顔とともに「ビッグブラザーがあなたを見ている」と描かれたポスターが貼ってあります。
(この文言は村上春樹の「1Q84」の中に出てきます。記憶にある方もいるでしょう)
しかし、このビッグ・ブラザーという人物が存在するのかさえハッキリしません。そこがまた不気味です。
世界観を楽しむ作品
1984は物語の世界観を味わう小説だと僕は思います。
1984の世界はただのフィクションというわけでもなく、断片的には我々の実社会にも当てはまる部分があると思いました。
そういうポイントを見つけて考察していくのも面白い小説です。
SF小説の中には、プロットをウリとする作品もあります。
SF+ミステリ小説として、最後に大どんでん返しが待っているのがそれにあたります。
僕はそういうミステリ系のSFも好きなのですが、1984はプロットで評価される小説ではありません。
それでもなお僕が1984を一番おすすめするのは、その世界観が強烈であるからに他なりません。
SFに少しでも興味があれば、必ずチェックしてほしい一冊です。
ジョージ・オーウェル 「動物農場」
「またオーウェルか」と言われそうですが、もう一冊紹介させてください。
ジョージ・オーウェルの「動物農場」という短編も、1984と同じ系統の小説です。
僕は1984が好きでたまらないので、当然動物農場も好きであり、紹介せざるを得ませんでした。
面白いのはやはり世界観
細かい設定は違えども、動物農場と1984は同じようなディストピア小説です。
動物農場の物語は、農場で飼われている動物たちが反乱を起こして人間を追放するところからスタート。
平等を目指して動物の社会を作るはずが、権力を握った豚たちによる管理社会が作られていきます。
読み進める中で感じる恐ろしい雰囲気は、1984に勝るとも劣りません。
順番としては1984から読んでいただき、気に入ればぜひ動物農場も読んでみてください。
こちらは短編なのでずいぶん読みやすいはずです。
ジョナサン・スウィフト 「ガリバー旅行記」
続いてご紹介するのは、SF小説の古典であり定番、ジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」です。
読んだことがなくても名前は聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
散りばめられた風刺
ガリバー旅行記は表面的に読むとただの冒険旅行記です。
しかし物語の一つひとつのエピソードは、実社会に対する的確な風刺になっています。
ガリバー旅行記の一番の面白みは、「風刺のメッセージが冒険記に溶け込んでいること」だと僕は思いました。
物語の中で主人公ガリバーは巨人の国や小人の国、馬の国を旅し、色々な価値観に触れます。
風刺のメッセージは直接的に表現されるのではなく、物語の中に緻密に埋め込まれています。
この技術には天才的なものを感じざるを得ませんでした。
書かれたのは1700年代
ガリバー旅行記を読んで驚かされたことがもう1つあります。
それはこの小説が書かれたのが1700年代だということです。
ガリバー旅行記の面白さとして、作者の固定観念にとらわれない柔軟なモノの見方があると思います。
インターネットが普及して様々な情報に自由にアクセス出来るようになった現代ならまだしも、1700年代にこんなモノの見方がどうしたらできるのでしょうか?
ただただ驚くばかりです。
読みやすい冒険小説
海外SFというと文体が固くて読みづらいイメージをお持ちかもしれません。
ガリバー旅行記は冒険旅行記ということもあって、海外SFの中でも読みやすい方だと思います。
設定を飲みこむのに苦労はしないはず。
これから海外SFを読みたい、という方にはその点で特におすすめできます。
アイザック・アシモフ 「ファウンデーション」シリーズ
アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズは、ミステリ好きの方に特におすすめしたい作品群です。
ロボットとファウンデーション
アシモフのSF小説で有名なのは、「ロボット」シリーズと「ファウンデーション」シリーズです。
映画「アイ,ロボット」はアシモフの短編集「われはロボット」を原作としています。これはロボットシリーズの1つといえます。
今回僕がおすすめするのは、後者のファウンデーションシリーズです。
宇宙規模のSFミステリ
ファウンデーションの一番の面白みは、そのプロットにあります。
ミステリ小説のように、最後にどんでん返しが起きたり、大きな謎が解けたりします。
これが知的好奇心をくすぐってやみません。
またそのスケールが宇宙規模だということも、独自のミステリ的面白さを生み出しています。
推理小説の場合ですと、部屋の中のしかけが云々というケースが多いですよね。
ファウンデーションではSFの土台の上で壮大な規模のミステリを仕掛けてきます。
SFが好きな方以外に、推理小説を好んできた方にもファウンデーションはおすすめです。
全7作
ファウンデーションは7作からなるシリーズものになっています。
ハヤカワ書房による邦題は次のとおり。
- ファウンデーション
- ファウンデーション対帝国
- 第二ファウンデーション
- ファウンデーションの彼方へ
- ファウンデーションと地球
- ファウンデーションへの序曲
- ファウンデーションの誕生
このうち第三作「第二ファウンデーション」までは新しい版が出ていて、新品で普通に手に入ります。
しかし「ファウンデーションの彼方へ」以降の作品は、現在中古でしか手に入らない状況です。復刻求む!
ジェイムズ・P・ホーガン 「星を継ぐもの」
最後にご紹介するのはジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」。
作品の系統は先述のファウンデーションに近く、宇宙スケールのミステリです。
緻密な理系ミステリ
アシモフのミステリもすごいのですが、ホーガンもまたすごい。
ピタゴラスイッチのように一つひとつ事実に迫っていく様は、もはや芸術です。
月面で発見された5万年前の死体を皮切りに物語はスタート。
その死体の正体が気になる方は、ぜひお手に取ってみてください。
続編もあります
「星を継ぐもの」はシリーズ化され、続編があります。
創元SF文庫の邦題は次のとおり。
- 星を継ぐもの
- ガニメデの優しい巨人
- 巨人たちの星
- 内なる宇宙
星を継ぐものが気にいった方は、ぜひこちらもチェックして見てください。
おすすめのSK小説 まとめ
以上、僕がおすすめする海外SF小説を5つご紹介しました。
まとめると、おすすめする順に次のとおりです。
オーウェルが2作も入っているのは、僕がそれだけおすすめする証だと思ってご容赦ください。
これからSF小説を読み始めたい方の参考になれば幸いです。