SF界の巨匠アイザック・アシモフの小説『ファウンデーション対帝国』の感想です。読んだときの面白さを損なうようなネタバレはありません。
シリーズ第一作目である『ファウンデーション』はSFとミステリの見事な融合であり、個人的には超が付くほどの傑作でした。
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『ファウンデーション対帝国』はこれに次ぐファウンデーションシリーズの第二作目になります。
このシリーズは銀河帝国の勃興を壮大に描いたものであり、本書の内容は時系列的に完全にも第一作目の続きになっています。
第一作『ファウンデーション』で構築された知性に訴えるSFミステリは、本作でも変わらず健在です。前作が面白いと思った方は読んで間違いないでしょう。なのでレビューとして長々と書くことも、その必要性もないと思います。
違うところといえば、前作が5章からなっていたのに対し、本作は「将軍」と「ザ・ミュール」という大きな2章で構成されています。
第1章「将軍」は前作の特徴を完全に引き継いだテイストであるという印象を受けました。帝国崩壊後の世界でファウンデーションが外部の驚異に立ち向かう様が描かれています。
その驚異となるのが、本のタイトルにもあるとおり、半分崩壊しかかっている帝国の残骸です。これまでは外縁星区の比較的小さな勢力が相手でしたが、今回はスケールが違います。
前作と同じく面白いのは、特定のキャラクターが何を選択し行動しようとも、”結局”世界はセルダン・プランによって導かれていくというところです。最後まで読んでみると、「誰が何をしようと、確かにそうなる…」と思わず膝を打ちました。
ここまで大きなスケールの物語で、最後は理詰めで納得できるオチを用意できるアシモフは、もう天才としか言いようがないでしょう。
続く第2章「ザ・ミュール」ではミュールと呼ばれる新しい驚異が登場します。個人的に、ファウンデーションシリーズはここから切り口が少し新しくなったように思います。
ミステリ的な魅せ方は変わらないのですが、(詳しくは書きませんが)これまでになかったタイプの要素やセルダン・プランとの関係性が新鮮でした。
そしてストーリーの内容的にはそのまま第三作目の『第二ファウンデーション』に引き継がれていきます。
強いていえば前作に比べて印象に残るキャラクターは少なかったかなと思います。
『ファウンデーション』では、ハリ・セルダン本人、市長サルヴァー・ハーディン、貿易商人ホバー・マロウといった分かりやすい英雄がいました。『ファウンデーション対帝国』で強く印象に残っているのはミュールくらい。でもハン・プリッチャー中尉と科学者エブリング・ミスは結構好きです。
あとこれは前作も同様なのですが、相変わらず表紙のイラストが宇宙戦艦なのが内容とミスマッチ。
総評としては、前作が気に入った方であればつべこべ言わず読むのが正解と思います。
ミステリ的な小説でもあるため、事前にあれこれレビューをチェックしたりせず読んでしまうのがおすすめ。