数年ぶりにPCでイラストを描きたくなり、新しくペンタブを用意することにしました。そこで購入したXPPENというブランド(メーカー)の『Deco 01 V2』という製品がとても満足のいくものだったのでレビューします。
昔の感を頼りに描いてみたところ、このような作品が出来ました↓
APEX LEGENDSというゲームのブラッドハウンドというキャラクターです。
Deco 01 V2はいわゆる「板タブ」で、PCの画面を見ながら描くタイプのペンタブです。Amazonでの価格は実質6,000円を切っていますが、これは板タブであることを考えてもとても安いです。僕が昔使っていたワコム製の板タブは、同じような仕様で2万円弱くらいしました。
総評としては、ここまで安価であるにも関わらず、
- アマチュアが使う分には描画性能に不満はない
- 付属品が充実している
- 6,000円以上するイラストソフト『opencanvas』の永久ライセンスが付属
という感じで、どう考えても値段以上に感じました。
一方で、デメリットをあえて挙げるなら、
- 製品にブランド的な価値は(今のところ)ない
- opencanvasの更新は止まっている
というのが思いつきました。
ただ詳しくは記事中で書いていきますが、トータルで見れば大変お買い得な製品であり、個人的にはこれを選んで正解でした。国内有名メーカーの比較的高価な製品よりこちらを選んで間違いではなかったと思います。一昔前にあったような「安かろう悪かろう」という印象はもう必ずしも正しくないんだなあと。
僕はプロでも何でもなくただのアマチュアでしかありませんが、その目線からレビューしてみたいと思います。板タブでデジタルイラストに挑戦してみたいという初心者の方にはこれはかなりおすすめです。
描画性能・操作性に問題なし
板タブで何よりも重要なのは、やはり絵が快適に描けるかどうかだと思います(本人の画力はともかく)。
まずこの点について述べると、アマチュアの視点から見れば全く持って十分すぎる性能だと感じました。板タブの上で専用のペンを動かすという動作に慣れているのであれば、あとは普通に絵が描けます。遅延や思ったところに描けないということは一切ありませんでした。
板タブの描画領域(ペンを検知する範囲)は実測でおよそ16cm×25cmでした。このくらいの広さがあれば、一般的なデスクでの環境で小さすぎると感じることはないんじゃないかと思います。エリアが狭すぎると作業がしづらくなるので、この広さは極めて重要に思います。
筆圧検知という「筆圧の強さを認識する細かさ」を表す指標があるのですが、この製品は8192となっています。数字が大きいほど微妙な変化まで検知できます。有名メーカーの8,000円くらいの製品でも2048だったりするので、あくまでスペック上の数値とはいえコスパに優れているといっていいでしょう。両者を実際に描き比べてみたわけではないですが、本製品だとペンを押し付ける強さによって線の質感がかなり変わってくるので、繊細な表現の違いが出せます。
個人的に特に優れていると感じたポイントとして、本体に8つボタンが付いているのがとても便利でした。
このボタンを使うことで、PC上のイラストソフトではなく、手元で色々な操作が出来ます。実際に使ってみると分かりますが、これがあるのとないのとでは天と地ほどの差があります。
例えば、
- ペン↔️消しゴム
- 拡大・回転モード
- スポイト
- 1つ前の操作を取り消す
などが手元で一瞬でできます。しかも一つの作品を描くまでにこれを何百、あるいは何千回と繰り返すことになるわけです。これらの操作をいちいちデジタルソフト上でやるのは非効率的すぎてやってられません。
いわゆる「左手デバイス」の方がもっと便利なのかもしれませんが、個人的にはこの本体のボタンだけでも十分使えるように思いました。
専用のドライバソフトを使うとボタンの割当をカスタマイズできるので、自分好みに設定を変えられます。個人的にはデフォルトのままで全く問題ないように感じました。
付属品が充実している
『Deco 01 V2』を買ってみて驚いたのですが、付属品がこれでもかというくらい充実しています。
- 板タブ本体
- ペン
- ペン立て
- 画面シート2種類(1つは初めから貼ってありました)
(ペンを動かしたときの質感を変えるもの) - 手袋
- 替え芯(10本)
- 接続用ケーブル
- USBアダプタ2種類
(USB-A↔️USB-C、USB-A↔️USB Micro-B)
赤の部分が特に親切だなと思いました。手刀の部分をカバーするための手袋がついているペンタブがあるなんてあるんですね。
実質6,000円を切る製品でここまで付属品が充実しているというのは、シンプルに驚きました。世界のどこで作っているにせよ、これで本当に利益が出るのか心配です。
そういうわけで、これでデジタルイラストを始めようと思っている場合、(PCを除いて)「必要なものがない」ということにはならないと思います。
イラストソフトの永久ライセンスが付属
本機『Deco 01 V2』には「opencanvas」という6,000円くらいのイラストソフトが永久ライセンスとしてバンドルされています。
(6,000円のペンタブを買うと6,000円のソフトが付いてくる・・・)
板タブとPCで絵を描こうとする場合、その他にイラストを描くためのソフトが必要です。Windows標準搭載の「ペイント」では機能が少なすぎてお話になりません。
opencanvasは日本の会社が作ったイラスト用ソフトです。実際に使ってみたところ、趣味で使う分には申し分ない機能が実装されていました。むしろ初心者のうちはある程度機能を理解して使いこなすようになるまで苦労するレベルだと思います。
何年か前に有名な「CLIP STUDIO PAINT」も使っていたことがあるのですが、基本的な部分だけで見れば正直どちらも変わりありません。ペンの種類やさらに発展的な機能を使おうとして初めて両者の違いが出てくるようなものだと思います。
バンドルソフトを語るうえで重要になるのがライセンスの種類です。この製品にバンドルされているopencanvasは「永久ライセンス」として手に入ります。つまり、死ぬまでずっと使えるということであり、ペンタブを手放しても、PCを買い替えてもずっと使えます。
某有名メーカーには同じく有名なCLIP STUDIO PAINTがバンドルされていて、そこは強みだと思います。ネームバリューでは確実に分があるでしょう。しかしそちらは期限付きのライセンスであり、その期限が切れた後も使いたければライセンスを別途買う必要が出てきます。
なのでライセンス付与から半年後にまた気が向いてイラストを書こうかなーとなったりしたときに、ライセンスの違いは重要になってきます。もちろんイラストソフトにはそれ自体を買う価値は大いにあると思いますが、ペンタブ選びではこういうところも考えた方がいいでしょうね。
実質6,000円以下という値段
これだけの性能で手が届きやすい値段であるため、気軽に試せるという点も評価出来ると思います。
「デジタルイラストを始めたい」と思い立ってまず問題となるのは初期投資です。
PCやタブレットは既に持っているとして、ペンタブとソフトを用意するのに何万円もかかるとなるとハードルが高すぎます。反対に、安い製品を選んだ結果、満足のいく使用感を得られずにイラストをやめてしまっても本末転倒です。描画領域の小ささや、ボタンの少なさで使いづらさを感じることは大いにあると思います。
そこで、6,000円以下で購入でき、イラスト初心者に必要となるものが一通り揃った本製品はかなり有力な選択肢になると思います。既に書いたように、使用感や機能、付属品とバンドルソフトなど、どの点をとっても初心者が使うには実用上十分すぎるレベルだと感じました。(これで不足や不満を感じる場合、それはもうかなりの熟練者なのでは)
この値段であれば、仮にデジタルイラストに挫折してしまってもまだ軽症で済むかなと個人的に思います。これが例えば数万円のペンタブを用意して腐らせてしまったら、けっこうな経済的・精神的ダメージになるでしょう。
その点、デジタルイラストに挑戦してみたい人が初めから十分な環境を安価に手に入れられる土壌を作ったという意味で、本製品には価値があると思います。
デジタルイラストは、無限の可能性を秘めたクリエイティブな趣味だと思います。最終的にハマるにせよハマらないにせよ、少しでも興味があれば人生で一度チャレンジして損はない分野だと思います。そういったときにこのような製品はうってつけです。
あえてデメリットを挙げるなら
ここまで描いてきたように、XPPEN Deco 01 V2は個人的にとても満足のいく製品でした。正直これといった不満もなく使えています。
しかしこうしてレビューを書く以上はやはりデメリット面にも触れておこうと思うので、思いついたことを書いてみることとします。
まず思いつくのは、製品のブランド的価値は見出しづらいというところでしょうか。
XPPENは中国のデジタルイラスト製品を開発するメーカーで、10年以上の歴史があるそうです。とはいえ、日本国内でその名が知れ渡っているわけではないというのが僕の印象です。国内ではペンタブといえばまずはWacomというのが共通認識なのかなと。
例えば、憧れの絵師さん、イラストレーターさんがいたとしても、その人はたぶんXPPENのペンタブを使って商業活用をしているわけではないと思います。なので、「自分が憧れている人と同じメーカーの製品を使いたい」というニーズには合わないことになります。
ちなみに僕はそういう憧れは全く持ち合わせていなかったので、メーカーはそこまで気にしませんでした。もちろん国内メーカーの方が親近感があるという点で好ましい、とは思いましたが、あまりにも価格差があるように感じました。
あとこれは製品のデメリットというには限りなく無理があるかと思いますが、気づいたので一応言及しておきます。
バンドルされているopencanvasのアップデートは事実上終了しているようです。僕がライセンスを取得したのが2024年の3月でした。この時点で最新だったバージョン7のリリースは2019年なので、それから5年が経っています。
よってバンドルソフトの今後のアップデート、機能拡充については、他のソフトの方が期待できるのかなと思います。
もちろん現バージョンの永久ライセンスが手に入ることには変わりはなく、現状でも十分すぎる機能が実装されています。そして何より、これはXPPENの製品自体とは関係ない事情ではあります。
総評:ブランド価値を求めない初心者にはかなりおすすめ
総評としてXPPEN Deco 01 V2は、これを買って正解だったと個人的に思えるペンタブでした。6,000円でここまでの作業環境が手に入るというのは、良い時代になったと思います。
繰り返し書いたように、これからデジタルイラストに挑戦してみたいという方には十分なスペックとなっていて、イラストソフトの永久ライセンスが付属しているのも大きな評価ポイントです。
確かに、プロが生活の糧を得るには物足りない点はあるかもしれません。しかし僕のように趣味の範囲でイラストを楽しみたいという人間にとっては何の問題もありません。相当なレベルにならないと不満という不満は出てこないんじゃないかなと思います。
一方、ペンタブとバンドルソフトのネームバリューでは他製品に分があるのも事実だと思います。「憧れの絵師さんはWacomのペンタブでCLIP STUDIO PAINTを使っている、自分もそれと同じ環境で絵を描きたい」という願望がある場合、本製品は向かないでしょう。
反対に、そういったネームバリューなどを気にせず、あくまでコストパフォーマンスを求める方にはとてもおすすめです。
3週間かけて頑張って描いた絵↓